衛武営国家芸術文化中心

今回の旅行の目的の一つが、この衛武営国家芸術文化中心(設計:フランシーヌ・ホウベン)を観ることでした。日本でも話題になっていたし、台湾の国家プロジェクトなので。
都市の中心から少し外れた地下鉄沿線に位置しています。
美麗島駅から東に向かって、高雄市文化中心、衛武営国家芸術文化中心、大東文化藝術中心と、芸術系や公園が数珠つなぎになっているエリアです。
衛武営国家芸術文化中心は、2003年に発表された新十大建設のうちの一つで、台湾全域に国際芸術文化センターを設置しようというもの。台中の台中大都会歌劇院(設計:伊東豊雄)、嘉義の故宮博物院南部院区(設計:姚仁喜)に続く3施設めとなります。

大きなガジュマルの樹がつくる木陰にヒントを得たとのこと。
造船所でつくられたすべてが一体となった鋼板による曲面の内部空間が、この建築一番のみどころでしょう。
材料はなんでも熱によって伸縮するので、熱帯地方のこの地では、夏の日没後に少し縮むと思います。溶接の跡も残している鋼板と道路のような路面の舗装、かなりクールな空間なので、ガジュマルの樹の木陰のように腰を下ろしてリラックスする空間ではないですが。

高雄の建築

高雄は、都市の再開発や現代建築の建設、歴史的な建築の保存、観光施設の積極的な開発など、勢いを感じる都市です。市長もやり手のようで、市内に等身大のパネルや巨大ポスターなどを時々見ました。どうやら総統選挙の国民党予備選に出るようです。わからないなりにテレビを観てると、どうやら奥さんが美人で社交的で人気があるようです。

高雄の地下鉄が交差する中心の駅が美麗島駅。ここはフランス人作家のステンドグラスが人気で、ピアノの生演奏やイベントもあります。地上出入り口の設計は高松伸。
その北側には日治時代に建設された台鉄高雄駅が移築されています。新高雄駅は線路ごと地下に作っています。
西子湾から沿岸を通る市電(LRT)は、充電式車両なので、架線がなく自転車専用道路も整備されているので、エコで気持ちいい空間になっています。
高雄85ビルは台湾で二番目に高い建築ですが、好感を持たれることは意識していない印象。

その裏手には、高雄市立図書館総館があります。
とても魅力的な図書館ですが、どこかで見たことのある建築です。
劉培森建築事務所と竹中工務店の設計施工ということなので、せんだいメディアテークの施工にも竹中工務店が関わっていたので、似たということなのでしょう。

伊東豊雄さんは高雄国家体育場の設計で、高い評価を得てその後台湾で建築をつくっていくきっかけになっています。この建物は、伊東事務所、劉培森建築師事務所、竹中工務店の組み合わせだったようです。
RCとスチールパイプの巧みな組み合わせで、見事な造形をつくっているスタジアムでした。

最近読んだ本

読書メーターという読んだ本や読みたい本を登録し、他の人の書評などとリンクして楽しめるサイトがあります。去年の秋から始めてみて、219日で156冊。1日平均0.7冊のペースで本を読んでいるようです。年間250冊、月に20冊ペースというところです。
建築の本や歴史の本、サイエンスや料理の本などジャンルは幅広く、著者も多い人で2冊までですから、一つのテーマでも複数の視点の本を読んでるといえますね。
ここ数カ月で面白かった本を少しピックアップしてみます。

振り返ってみると、日本やアメリカ、欧州が今後どうなっていくのか?そのあたりが一番気になるところですから、そういう本をいくつか読んでいます。
現在の建築や生活文化のルーツは気になるところですので、何がどのあたり時期のものをルーツとしているのか?ということがいくつかはっきりしました。
歴史に関する本は、あまり対象範囲を広げないようにしようと思いつつ。。。

●経済に関する本

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円高、デフレなど日本の経済にのしかかる重いダメージの理由を、シンプルなマクロ経済から解き明かしてくれます。

[amazon_image id=”4047102334″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)[/amazon_image]
デフレが止まらない。理由は簡単で、生産年齢人口が減っているから。
じゃあどうすべきか・・ということが書かれています。
地方の経済を長く分析している著者なので、現状の把握が具体的です。

[amazon_image id=”412102124X” link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]日本経済の底力 – 臥龍が目覚めるとき (中公新書)[/amazon_image]
日本の経済の希望を感じさせてくれます。

●建築に関する本

[amazon_image id=”4306052389″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]建築家・吉田鉄郎の『日本の建築』―JAPANISCHE ARCHITEKTUR,1952 (SD選書)[/amazon_image]
吉田鉄郎氏が半世紀前にドイツ語で書いた日本建築史の本を和訳したものです。
異文化の人に説明するために書かれたものなので、解りやすく、奥が深いものとなっています。
住宅や庭について書かれたものも和訳されているのでぜひ読んでみたい。

[amazon_image id=”4562047488″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]サグラダ・ファミリア: ガウディとの対話[/amazon_image]
アントニオ・ガウディやサグラダファミリアに関する本はたくさん出ていますが、この本は写真も外尾さんの文章も素晴らしい。

●住まいに関する本

[amazon_image id=”4782411057″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]江戸時代 日本の家―人々はどのような家に住んでいたか[/amazon_image]
日本の伝統的と思ってる住宅の形式や要素の多くは、江戸時代の武家の住まいを由来とするものが多いようです。

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TOTOのトイレ開発の中心人物が書き下ろしたウォシュレットの開発秘話。
日本が誇るウォシュレットはいかに偉大なのか?そう思わずにはいられません。

●その他の本

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茶の湯

昨日、一昨年竣工したお茶室のある住宅でのお茶会にご招待頂いて行ってきました。
初めてのことなので、ちょっとした動作も大変勉強になりました。
これまで、たくさんの伝統的な庭や建築を見てきましたが、いづれも建築を観るという目で見てきた物。
お芝居で言うと、使ってないがらんどうの劇場を観るということ。
日本の伝統的な建築に対する意識が少し立体的になった午後でした。
茶の湯は、日本の文化の終着点というのも納得できます。