今年印象に残った本

家康

今年の大河ドラマ「どうする家康」は、かなり思い切った脚本、演出で、長年の大河ドラマファンからの失望と、歴史や大河ドラマにそれほど興味のない人の熱い支持に二分されたように感じました。
従来は、「時代」を描くことを基本としていたために、どうしても登場人物が多くて、外せないエピソードが多くあるために、シンプルな主題を伝えるドラマとして作りにくかったように思いますが、今回は、制作者の創造的作品として思い切って、「時代」を描くことはやめて、登場人物も減らし、お決まりの合戦シーンもほとんどカットしました。登場人物も善悪の役割を明確に設定したので、フィクションのドラマとしてわかりやすくなったのでしょう。
人物ドラマとしては、緻密に表現できていると思いますので、視聴率はさておき、記憶に残る大河ドラマになったのではないでしょうか。当初、周辺のスタッフを大きく描くような報道がありましたが、思ったほどでもなく、主役家康の独り舞台であったことは少し残念。古いアメリカのドラマ「ザ・ホワイトハウス」のようなものをイメージしてたのですが。
今回は家康に関する新しい学説や、家来たちのことを勉強。

  • 家康研究の最前線 平野明夫編・・・江戸時代初期に定説と呼ばれるもの結構なものが創作されたようです。近年の研究者は、一次資料を丹念に比較することで、創作された定説を再確認しているようです。
  • 徳川十六将 伝説と実態 菊池浩之・・・徳川十六将図はかなりの種類があるようです。それらの構成メンバーを探ることで、選ばれた理由やルーツを探ります。最初に十六将を選んで図を描かせたのは渡辺半蔵ではないかとのことです。
  • 家康家臣の戦と日常 松平家忠日記をよむ 森本昌広・・・関ヶ原の合戦の前に伏見城で戦死した松平家忠は、長く日記をつけていました。かなり貴重な記録です。その日記を通して当時の生活を知ることができます。お付き合いの記録が多かったようです。

料理

今年はスパイスカレーを作るときは、二種類以上作ることを基本としていました。
チキンカレーを基本とすると、豆や野菜、キーマカレーなど、材料やスパイスのバランスを変えて、少し味や香りのハーモニーになるように、、、
ナイルさんやレヌ・アロラさんの本は基本を学べて参考になりました。

歴史

古代史では、瀬戸内海が航路となった時期はいつなのか?それ以前は、九州と近畿をつなぐ航路や、半島と近畿をつなぐ航路が日本海だったはずなのですが、そのあたりの歴史的な経緯について、考える材料になりました。
永野さんは元国交省港湾の官僚で、土木技術者の観点から、古代の舟の航行や港湾、貿易など興味深い視点を提供してくれます。古事記や日本書紀の神武の東征から、瀬戸内海ははるか古代から船が往来する航路だったと漠然と思っていましたが、水や食料の供給や、水先案内や船の修理など一定間隔で港の機能が整っていないと航路とはならないというのは確かに。。。
推古朝あたりか?
岡谷さんは神社の起源について幾つか著作があります。敦賀あたりから西に向かって、神社や地名などに残る古代の痕跡から、古朝鮮と神社の起源をたどっていくのですが、出雲に入るとその痕跡がぶっつりと絶えてしまう。
ある時期に、意図的に出雲地域の神社やその由来などを書き換えたのではないか?という説。
読んだ直後に、たまたま島根県でお会いした方のご主人が、その時期?に出雲を追われた神社の関係者だったという言い伝えがあるそうです。
古事記や日本書紀を編集した藤原不比等や持統天皇が、書物との整合性をとるために現地をそれに合わせたのか?出雲が神話では輝かしい反面、隣接する丹波や越、吉備などには淡白なことも重要なポイントです。

生活・文化

数年前に英国のドラマ「ダウントンアビー」を熱心に観ていました。昔、クリスティやアーサーランサムが好きだったこともあって、英国の郊外で暮らす貴族や、田舎の農村の人たちの暮らしに興味はありました。なかなか現代の視点でうまく描けていたと思います。
ヴィクトリア朝の香りが残る時代から、第二次大戦後の時代の移り変わりもたいへん興味深く知ることができました。
そうしたダウントンアビーファンや英国の歴史小説愛好家向けの本ともいえますが、謎に満ちた存在である執事や、日本の一部で流行ってるメイドの世界を、具体的な映像や記録から浮かび上がらせてくれます。遠い国や古い時代の人たちの暮らしは、今とは大きく違うと同時に、どこかに痕跡がつながっているようで、大変興味深いです。
人類は多様でユニークであるということを改めて感じます。多様な文化や暮らしをもつホモサピエンスは面白い。