ハマスホイとデンマーク絵画 展

新型コロナウイルスの蔓延による長い自粛生活から、次の新しい生活様式に移行するタイミングになったので、再開された山口県立美術館の「ハマスホイとデンマーク絵画」展に行ってきました。
居住するエリアで対象を絞り、当日に受付を行って整理券を配り、15人ずつのグループで決められた時間で展示室を移動するという方式を取ることで、三密を防ごうという試み。
うちを6時半に出て、作品鑑賞は10時10分から11時半まで。過剰と思えるほどの体制でしたが、丁度いい密度で作品を観ることができました。

1Fの展示室では、ハマスホイに影響を与えたであろう同時代の作家の作品。
繊細緻密であったり、光の表現が巧みであったりと大変興味深い内容でした。

2Fには、ハマスホイの作品が中心。人がいたとしても後ろ姿だったり。なにもない単なる「部屋」を描く作品も多数。
絵には主題や、それを描く対象があって、それが存在する空間は背景であったり、大道具だったりするのが常ですが。お芝居でいうと最初から最後まで役者が出てくることなく、背景だけを鑑賞するというものなので、当時の人は不思議だという認識だったようですね。

空間には必ず時間も一体になっています。時空間というもの。
観察者が空間に存在する時間と、その空間がかつて存在した時間というものもそこに含まれています。ハンスホイはそうした古い空間が大好きで、何度も古い魅力的な内装の住宅に引っ越して、絵の対象とします。
奥さんが長く入院し、退院した直後の目にくまのある疲れた表情の絵も、表情に込められてる人の経年の痕跡を描いています。
若くて綺麗な女性を描きたいという意識のない人だったと思います。

この展覧会は、山口県立美術館の学芸員が、欧州に留学中にハンスホイに出会って長く研究し、7年かけて企画してきたものです。
新型コロナウイルスの影響で東京展も、山口展も短縮化してしまったのですが、コアなファンのいる作家なので、鑑賞する側にとっても密度の濃い展覧会になったと思います。