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林家雑記 その5 

寝起き


わたしは寝起きがたいそう悪い。布団をめくって身を起こすことが、この世の終わりのように思える。もしそうであるならば、この世の終わりまでずっとずっと眠っていたほうがいい。

毎日毎日、体を横たえ眠りをむさぼる怠惰な動物の身から、朝の支度を整える人間になるのには、相当なエネルギーが必要であるのだ。二本足で立ち上がることに、人類の進化に値するほどに時間と条件が必要なのだ。毎朝、直立歩行への進化をやらねばならぬ。こんな壮大な歴史を毎朝だ・・・

いいわけは聞き流して効果的な解決策を開発したKは、まったく科学の人だと思う。

その技をかけられると、わたしは狐に摘まれたように、気が付いた時には布団の上に座っている。Kはたった二本の腕を使って、それも寝たままの状態でわたしの体をごろんと転がすのだ。首と膝を捕まえられたと思った次の瞬間、身体は起きあがっている。

頭からさーっと血液が下の方に降りていくような気持ちがする。何回やってもいつも不思議で、どういう風にして起きあがってしまうのかよくわからない。だから説明できない。ただよくわからずにきょとんとしてしまうので、もう一度寝ころぶ気をなくしてしまう。

アー起きてしまった、意に反して起きあがってしまった。自然の摂理というものをどうしてくれる。力ずくでもなく、感情に訴えるでもなく、こんなやり方で物事はひょいと起きあがってしまう。

嬉しいような、つまらないような。


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