式場隆三郎:脳室反射鏡

現代美術館の式場隆三郎展に行ってきました。
新型コロナ蔓延の影響で、三密回避の注意があったのですが、幸い鑑賞者が多くないので入場は規制されるわけでもないのにソーシャルディスタンスは確保できるという幸運な状況です。

特に予習もせずに行ったので、式場さんのことを知りながら展示を巡る感じでちょうどよかったです。

式場隆三郎さんは1898年新潟生まれの精神科医。アルヴァ・アアルトや尾崎士郎、井伏鱒二、周恩来、ヘンリー・ムーア、田畑政治と同い年です。

戦前に日本にゴッホを紹介し、全国の様々な施設で展覧会を行ったりしています。
柳宗悦との交流も深く、長く密接な関係を続けているようです。
自邸の設計は濱田庄司に加えて柳宗悦の名前もあります。

その後、美術と精神の分野での活動が甚だしく、「裸の大将」の山下清を世に出したりしています。ドキュメンタリーや映画化などにも協力も。
草間彌生が最初に展覧会をしたことにも支援しています。

今でこそアウトサイダー・アートという分野が確立していますが、戦前からそうした文脈で様々な活動をしていたというのは驚くほかありません。
「二笑亭奇譚」がうちの書棚にあったので、二笑亭という変わった建物を紹介した人という認識が大きく崩れます。

柳宗悦の古い著書に「南無阿弥陀仏」という本があります。
民藝を理論化していく上で、親鸞聖人や浄土真宗をベースにしているということがよく分かる本です。
浄土真宗には「妙好人」という人が重い存在として扱われます。

民藝のとっての妙好人が、式場さんにとっての山下清やゴッホだったのでしょう。

柳宗悦と近い位置で精神と美術の関係の文筆活動もしつつ、しっかりゴッホグッズをプロデュースしてたり、戦後は、公爵サドの翻訳をして発禁になったりカストリ雑誌で人気ライターだったり、どんなひとだったのかもっと深く知りたくなりました。
著書がほとんど絶版になっているのが残念です。

常設展では、草間彌生さんの作品も複数出展されています。

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