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林家雑記 その11 

ハエ


今日はずっと二匹のハエがわたしにつきまとっている。
窓際に座っても、台所に立っても、どこにいてもわたしのまわりを飛んでいる。うるさくてしょうがないけどじっと我慢している。なぜならこれは、仕返しを受けているに違いないのだ。
ハエや蚊が飛ぶ季節になり、蚊については対処していたがハエは見逃していた。ある日遊びに来た友人が「そろそろものが腐りやすくなる季節だ。食中毒に気を付けよう。ハエにも気を付けた方がいい。」と言う。そのとき、うーうーハエがあたりを飛んでいたのだ。そうかと思ってそれ以来ハエの動きに注意を払うようになった。彼らにも性格や好みがあるらしく、飛び方やとまり方が各々違う。電気ポットが好きで、いつもそこにとまっているハエを見つけた。暖かくて気持ちいいのかもしれない。ずっと動かずにいる。夜になってKにそう話すと「卵を産んでいるかもしれない。」と言う。それは困る。気持ち悪くなったわたしは、次の日新聞紙を丸めハエたたきを開始した。そうなると止まらないもので、その日のうちに五匹もしとめてしまった。帰ってきたKに報告すると「テリトリーの問題だから、そこにいなくなれば次のが飛んでくる。きりがない。」と言われる。確かにその通りなので、もう退治するのはやめにしたのだが、そのときのハエの仇で、嫌がらせされているのかもしれないのだ。ハエにはハエのネットワークがあって、きっと敵討ちのハエがわたしのところに派遣されたのだ。
頭の上から顔の前からぶんぶんうなり、肌にぺとっとくっついてくる彼らをじっと我慢して、この前の五匹を思い出し、なむあみだぶつと唱えた。


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